【理学療法士監修】3分で呼吸を深くする|姿勢と活力を取り戻す在宅ルーチン
「最近、疲れやすい」「声が小さくなった」「外出が億劫」――。それは年齢のせいではなく、呼吸が浅くなっているサインかもしれません。
本記事では、理学療法士の視点から呼吸が浅くなるメカニズムと、在宅で続けやすい“3分ルーチン”、そして実際の改善エピソードを紹介します。
※本記事は一般的な情報提供を目的としています。持病(心疾患・呼吸器疾患など)がある方は、医師の指示に従ってください。
なぜ高齢になると「呼吸が浅く」なるのか
呼吸が浅くなると聞くと「肺が弱ったのでは?」と考えがちですが、現場で多いのは肺そのものより“体の使い方”の変化です。
特に影響が大きいのが、座っている時間の増加と姿勢の崩れです。
長時間の座位が続くと、背中は丸まりやすくなり、肋骨(ろっこつ)や胸椎(背中の骨)の動きが小さくなります。
すると胸の“ふくらむ余白”が減り、結果として吸える量が減る=浅い呼吸が定着します。
さらに浅い呼吸が続くと、自律神経のバランスが乱れやすくなり、疲労感・集中力低下・不安感などの「なんとなく不調」が起こりやすくなります。
「年齢だから仕方ない」で片付けられがちな変化ですが、呼吸パターンは再学習で改善が見込めることも少なくありません。
関連テーマ:長く座る生活で進みやすい衰えについては、こちらも合わせてどうぞ。
3分で変わる理由|理学療法士が見る“胸郭と姿勢”
3分で呼吸が変わる、というと大げさに聞こえるかもしれません。しかし「筋肉を大きくする」のではなく、目的は神経系への合図(再スイッチ)です。
呼吸は、姿勢・胸郭の可動性・体幹の安定が組み合わさって成り立ちます。
ポイントは「深呼吸」ではなく“胸郭を動かす”こと
いきなり大きく吸おうとすると、肩がすくみ首が緊張し、逆に疲れてしまうことがあります。
重要なのは、胸郭(肋骨)を前後・左右・斜めに動かし、「ここが動くんだ」と身体に思い出させることです。
呼吸が浅い人に多い“姿勢の型”
- 背中が丸く、胸の前がつぶれている(胸郭が開かない)
- 頭が前に出て、首・肩に力が入りやすい
- 息を吸うと肩が上がる(補助呼吸筋に頼りがち)
この型を、短時間でもいいので「戻す」ことで、呼吸は驚くほど楽になります。
関連テーマ:姿勢の崩れは腰痛ともつながりやすいです。
在宅でできる3分ルーチン|今日からの実践
ここからは、道具なし(またはバスタオル1枚)でできる、続けやすい3分ルーチンです。
「気持ちよく終わる」強度で十分。頑張りすぎは不要です。
① バスタオル胸ひらき(60秒)
- バスタオルを丸め、背中の真ん中(肩甲骨の下あたり)に当たるように仰向けになります。
- 両腕を横に開き、肩の力を抜きます。
- 鼻から吸って、口から細く長く吐く。これをゆっくり繰り返します。
狙い:胸椎の伸展+胸郭前面の解放。胸が広がる余白を作ります。
② 肋骨よこ拡げ呼吸(60秒)
- 椅子に浅く座り、両手を肋骨の横(脇腹)に当てます。
- 吸うときに「手を横に押し返す」イメージで、脇腹をふくらませます。
- 吐くときは、みぞおちが軽く下がる感じで細く長く吐きます。
狙い:肋骨の側方拡張(横への広がり)を思い出させ、肩で吸うクセを減らします。
③ 立位で壁タッチ呼吸(60秒)
- 壁に背中をつけて立ち、後頭部・背中・骨盤ができる範囲で壁に触れるようにします。
- 肩をすくめず、鼻から吸って胸郭をふくらませます。
- 口からゆっくり吐いて、肋骨が内側へ戻る感覚を確認します。
狙い:姿勢の“基準点”を作る。呼吸と姿勢をセットで整えます。
継続のコツ:「朝の歯磨き後」や「お風呂前」など、既にある習慣にくっつけると続きます。
1日できなかったら、翌日に2回やる必要はありません。淡々と戻るのが最短です。
【実例】80代女性が「声と活力」を取り戻した話
ここからは、在宅のルーチンが生活に変化を生んだ一例です(個人が特定されないよう内容は一部調整しています)。
都内在住の80代女性。ご家族からの相談は「最近、会話が短くなり、電話もすぐ疲れる。外出も減って心配」というものでした。
病気が増えたわけではないのに、日常の元気が落ちている――こうしたケースは珍しくありません。
評価で目立ったのは、胸の前がつぶれた姿勢と、吸気時に肩が上がるパターン。
ご本人は「息はしているから問題ない」と感じていましたが、実際には呼吸の効率が落ちて“疲れやすい身体の使い方”になっていました。
そこで、いきなり運動量を増やすのではなく、まずは呼吸が入る身体を作る方針に。
バスタオル胸ひらき・肋骨よこ拡げ呼吸・壁タッチ呼吸を、1回3分だけ。
「頑張る」ではなく「整える」感覚を大事にしてもらいました。
2〜3週間ほどで、「息を吸うときに肩が上がらなくなった気がする」と変化が出はじめ、
1〜2ヶ月後には「電話のあとに、前ほど疲れない」「声が出しやすい」と言葉が変わりました。
さらに生活面でも、家の中の作業が増え、外出の頻度も少しずつ戻っていきました。
改善の鍵は、特別なトレーニングではなく、呼吸と姿勢の“基本”が日々リセットされたことでした。
呼吸が変わると、身体は「動いても大丈夫」と判断しやすくなります。
これは、体力よりも先に行動の心理的ハードルが下がる、という意味でも大きいのです。
関連テーマ:気づかない衰え(フレイル)を早めにケアする視点はこちら。
呼吸が変わると、生活が変わる|よくある変化
呼吸が整うと、最初に変わるのは「運動能力」よりも、日常の感覚です。
実際に多い変化をまとめます。
- 疲労感が軽くなる:息をするだけで疲れる状態が減り、家事・外出の負担が下がります。
- 声が出しやすくなる:呼気が安定し、会話の持久力が上がりやすくなります。
- 姿勢が起きやすい:胸郭が動くと背中が伸びやすく、見た目の印象も変わります。
- 睡眠の質が上がる:リラックスのスイッチが入りやすくなる人もいます。
どれも派手ではありませんが、こうした“小さな回復”が積み重なると、生活の自信が戻りやすくなります。
続かない人の共通点|失敗しない工夫
「正しくやる」より「やめない」
ルーチンが続かない理由の多くは、フォームの問題ではありません。
目標を高くしすぎて、疲れてやめてしまうことです。
おすすめの工夫
- 毎日できない前提で、週3〜4回でもOKにする
- 「朝」「入浴前」など、既存の習慣にくっつける
- その日の体調が悪い日は、①だけ(60秒)でもOKにする
「自分でやっているつもりなのに変わらない」場合は、姿勢のクセや胸郭の硬さが強いことがあります。
その場合は、国家資格者が状態を見ながら調整することで、変化が出るまでの時間を短縮できることがあります。
RioToRe(リオトレ)では、理学療法士がご自宅に伺い、呼吸・姿勢・体幹の状態を評価したうえで、
「続く形」に落とし込んだ在宅ルーチンを一緒に作ります。
出張パーソナルトレーニング/自費リハビリ(RioToRe公式)
関連テーマ:転倒予防や身体づくりの考え方も内部リンク候補として相性が良いです。
まとめ|“見えない体力”を取り戻す
呼吸は、目に見えない体力です。そして多くの場合、年齢よりも姿勢と胸郭の動きに影響されます。
だからこそ、1回3分でも「胸郭を動かす習慣」を入れると、疲れやすさや活力の感覚が変わることがあります。
もしご家族の「なんとなく元気がない」が続くなら、歩行や筋トレより先に、まずは呼吸の土台から整えるのも選択肢です。
小さな回復が、生活の自信を連れてきます。
よくある質問
Q1. 1日3分でも本当に意味がありますか?
目的が「筋肥大」ではなく「胸郭・姿勢の再学習」であれば、短時間でも意味があります。
まずは“呼吸が入りやすい形”を思い出すことが第一歩です。
Q2. どのタイミングでやるのが良いですか?
朝(起床後)や入浴前など、既存の習慣に紐づけるのがおすすめです。
大事なのは「時間帯」より「続く場所・流れ」です。
Q3. 痛みがある場合はやっても大丈夫?
首・肩・背中に痛みが強い場合は無理をせず、①のバスタオル胸ひらきは高さを下げる、時間を短くするなど調整してください。
持病がある方、症状が悪化する方は医師へ相談のうえ実施してください。
Q4. 自分でやっても変わらないときは?
姿勢のクセや胸郭の硬さが強い場合、フォームが少し違うだけで狙いが外れることがあります。
その場合は、理学療法士が評価して「今の身体に合う形」に調整すると、変化が出やすくなります。
【監修者プロフィール】
八幡 亮(やわた りょう)
国家資格:理学療法士(PT)
RioToRe代表。
回復期リハビリ病院にて4年間、脳血管疾患や整形外科術後の患者を含む2,000人以上の症例を担当。その後オーストラリア・シドニーでパーソナルトレーナー/指圧マッサージセラピストとして活動。
現在は東京を拠点に、理学療法士トレーナーによる高齢者専門の出張型パーソナルトレーニング・自費リハビリ「RioToRe」を運営。企業の健康経営サポートや講演活動も行い、最新のリハビリ知見を活かしたサービスを提供している。
<メディア出演>
テレビ東京「なないろ日和」出演
雑誌・Webメディアにて健康記事を多数監修

