疾患別 記事

disease-articles

2026.03.15   疾患別 記事

【理学療法士監修】椎間板ヘルニアのリハビリ|自宅でできる体操・やってはいけない運動・手術の目安|60代・70代・80代向け

※本記事は、理学療法士/パーソナルトレーナーの八幡 亮が監修しています。
リハビリ病院やオーストラリアのフィットネス業界での経験を持ち、高齢者の身体機能改善やパーソナルトレーニング、自費リハビリに精通した専門家が、正確かつ実践的な情報をお届けします。

椎間板ヘルニアのリハビリで大切なのは、「痛いから一切動かない」でも「早く治したいから無理に鍛える」でもなく、その時の症状に合わせて安全に動くことです。

腰椎椎間板ヘルニアでは、腰やお尻の痛みだけでなく、足のしびれ、坐骨神経痛のような痛み、足に力が入りにくい感じが出ることがあります。

まずは強い症状を見逃さず、落ち着いてからは体の使い方を整えながら日常生活へ戻していくことが大切です。(日本整形外科学会「腰椎椎間板ヘルニア」)

この記事では、椎間板ヘルニアの基本、症状別・時期別の考え方、自宅でできる体操、やってはいけない運動、手術の目安、高齢者で気をつけたい点まで順番に整理していきます。


目次


まず確認|椎間板ヘルニアのリハビリは有効?いつから始める?

椎間板ヘルニアのリハビリは、痛みを我慢して動くことではありません。
目的は、痛みやしびれを強めにくい体の使い方を身につけながら、日常生活を続けやすい状態へ近づけることです。

運動療法は、保存療法のひとつとして役立つと考えられています。歩行や体幹・股関節まわりの運動で、腰や足の症状、生活のしにくさ、生活の質の改善が期待できるという報告があります。一方で、全員に同じ運動量や同じ種目が合うわけではなく、痛みやしびれの出方を見ながら調整することが大切です。
(Clinical efficacy of exercise therapy for lumbar disc herniation、日本整形外科学会「腰椎椎間板ヘルニア」)

痛みが強い時期は無理に動かしすぎない

発症直後や、腰から足にかけて強い痛みが出ている時期は、無理な前かがみ、重い物を持つ動き、勢いのあるストレッチを避けることが大切です。
この時期は「鍛える時期」ではなく、「悪化しやすい動きを減らす時期」と考えるとわかりやすいです。

日本整形外科学会の患者向け資料でも、痛みが強い時期には腰の安静や、短い期間のコルセット装着が行われることがあるとされています。
(日本整形外科学会「腰椎椎間板ヘルニア」)

少し落ち着いたら安全に動くことが大切

痛みが少し落ち着いてきたら、必要以上に動かないままでいるより、無理のない範囲で体を動かすほうが進めやすいことがあります。
ずっと安静にしすぎると、筋力や体力が落ちて、かえって日常生活へ戻りにくくなることがあるためです。

NICEでは、腰痛や坐骨神経痛に対して、状態に合わせた自己管理の情報提供と、普段の活動をできる範囲で続けることを勧めています。
(NICE guideline NG59)

リハビリで目指すのは「痛みを減らしながら動ける体」

リハビリで大切なのは、ヘルニアを無理に押し戻すことではありません。
腰や骨盤、股関節まわりの動きを整え、神経への刺激を増やしにくい動き方を覚え、痛みやしびれがあっても生活しやすい状態を目指すことです。

AAOSでも、歩行プログラムや、背中・脚の柔軟性や筋力を整える運動が紹介されています。
(AAOS “Herniated Disk in the Lower Back”)

まず医療機関に相談したい症状

次のような症状があるときは、自宅体操を優先するより、整形外科での確認を先に考えてください。

  • 足に急に力が入りにくくなった
  • つまずきやすくなった、歩きにくさが強い
  • しびれだけでなく感覚の鈍さが強い
  • 排尿や排便の異常がある
  • 安静にしていても強い痛みが続く

こうした症状は、保存療法だけで様子を見るより、早めの評価や手術の検討が必要になることがあります。
(日本整形外科学会「腰椎椎間板ヘルニア」)

椎間板ヘルニアとは?症状・原因・検査を簡潔に整理

椎間板は、背骨の骨と骨の間でクッションの役割をしている組織です。
中心のやわらかい部分と、その周りを囲む線維の部分からできています。

この椎間板に負担がかかると、中の組織が外へ出て神経を刺激し、腰痛やお尻の痛み、足のしびれ、坐骨神経痛のような放散痛、筋力低下が起こることがあります。重い物を持つ動きや、腰に負担がかかる姿勢がきっかけになることもあります。
(日本整形外科学会「腰椎椎間板ヘルニア」)

まず押さえたいポイント

  • 腰痛だけでなく、足のしびれや痛みが出ることがある
  • 前かがみや重い物で悪化しやすいことがある
  • MRIで見えても、それだけで原因とは限らない
  • 診察では筋力や感覚、歩き方も大切になる

腰痛・坐骨神経痛・しびれが出る理由

飛び出した椎間板の組織が神経根を圧迫したり、その周りに炎症が起きたりすると、腰だけでなく、お尻から太もも、ふくらはぎ、足先にかけて痛みやしびれが出ることがあります。
いわゆる坐骨神経痛のように感じる方も多く、足に力が入りにくくなることもあります。
(日本整形外科学会「腰椎椎間板ヘルニア」、AAOS “Herniated Disk in the Lower Back”)

なぜ前かがみや重い物で悪化しやすいのか

前かがみの姿勢や、腰を丸めたまま重い物を持つ動きは、椎間板に負担がかかりやすいとされています。
洗面、掃除、草むしり、低い場所の収納作業などで症状が強くなる方がいるのはこのためです。
(日本整形外科学会「腰椎椎間板ヘルニア」)

MRIだけで決めつけないほうがよい理由

MRIで椎間板のふくらみや突出が見えても、それだけで今の症状の原因とは言い切れません。
日本整形外科学会の資料でも、画像で膨らみが見えても、症状がなければ問題にならないことがあると説明されています。NICEでも、画像検査は routine に行うものではなく、治療方針に関わる場合に検討するとされています。
(日本整形外科学会「腰椎椎間板ヘルニア」、NICE guideline NG59)

リハビリ前に確認したい検査と診察のポイント

椎間板ヘルニアでは、MRIだけではなく、足の感覚、筋力、反射、歩き方、下肢伸展挙上試験(SLR)なども見ながら判断します。
特に、「どの動きで悪化するか」「しびれがどこまで広がるか」「片足立ちやつま先立ちがしにくいか」は、リハビリの内容を決めるうえで大切な情報になります。
(日本整形外科学会「腰椎椎間板ヘルニア」)

症状別にみる椎間板ヘルニアのリハビリ

椎間板ヘルニアのリハビリは、全員が同じメニューでよいわけではありません。
腰の痛みが中心なのか、足のしびれが強いのか、筋力低下や歩きにくさがあるのかで、進め方は変わります。

腰の痛みが中心のとき

腰の痛みが中心で、足のしびれや筋力低下が強くない場合は、呼吸を使った軽い体幹運動や、骨盤をやさしく動かす体操から始めやすいです。
ここで大切なのは、強く鍛えることではなく、固めすぎず、動かしすぎず、負担の少ない動きを増やしていくことです。

足のしびれが中心のとき

足のしびれが主な悩みのときは、しびれが強くなる姿勢や動きを先に見つけることが大切です。
しびれが強いのに無理なストレッチを続けると、かえってつらくなることがあります。

この場合は、体操だけでなく、座る時間を短く区切る、立ち上がるときの姿勢を工夫する、歩ける範囲で短時間の歩行を取り入れる、といった生活の調整も大切です。

力が入りにくい・歩きにくいとき

足に力が入りにくい、つまずく、階段が不安といった症状がある場合は、自宅体操だけで進めるより、医療機関での再評価を前提に考えたほうが安全です。
特に高齢者では、若い人に多いはっきりしたSLR陽性が出にくい一方で、歩きにくさや日常生活の不自由さが強く出ることがあります。
(高齢者腰椎椎間板ヘルニアの臨床所見と病態)

咳・くしゃみ・前かがみで悪化しやすいとき

咳、くしゃみ、靴下を履く動き、洗顔のような前かがみで足に響く痛みがある場合は、腰を深く丸める動きが症状を誘発している可能性があります。
この時期は、床から物を拾うときに膝を使う、洗面で片足を少し前に出す、長時間座りっぱなしにならないといった工夫が役立ちます。

症状レベル別整理

症状レベル主な症状推奨リハビリ注意点
軽度腰痛が中心、足症状は軽い呼吸練習、骨盤の前後運動、短時間歩行痛みが増える前かがみを繰り返さない
中等度下肢のしびれや放散痛がある姿勢調整、座位時間の見直し、やさしい体幹・股関節運動強いストレッチや無理な筋トレは控える
注意が必要足に力が入りにくい、歩きにくい医療機関で再評価を受けながら個別に進める自己判断だけで運動を増やさない
早めの受診が必要排尿・排便異常、急な脱力、強い感覚障害自宅体操より受診を優先手術判断が必要な場合がある

同じ椎間板ヘルニアでも、痛みが中心なのか、しびれが中心なのか、筋力低下があるのかで進め方は変わります。
この表は目安であり、実際には年齢、普段の生活、画像所見、診察結果を合わせて考えることが大切です。
(日本整形外科学会「腰椎椎間板ヘルニア」、高齢者腰椎椎間板ヘルニアの臨床所見と病態)

進行段階別にみる椎間板ヘルニアのリハビリ

痛みが強い時期は安静にしすぎないことも大切

発症直後は、悪化しやすい動きを避けることが優先です。
ただし、寝たきりのような過ごし方になると、体力や筋力が落ちやすくなります。

トイレや食事、短い室内移動など、必要な動作はできる範囲で続け、つらい姿勢を長く続けないようにします。NICEでも、普段の活動をできる範囲で続けられるよう支援することが勧められています。
(NICE guideline NG59)

少し動ける時期は日常動作の戻し方が大切

痛みが少し落ち着いた時期は、体操だけでなく、立ち上がり方、座り方、掃除や洗面の姿勢などを見直すことが大切です。
「どの運動をするか」だけでなく、「普段の動きで悪化しないか」を整えることが、その後の回復につながります。

回復期は再発予防まで見すえる

痛みが減ってきたら、すぐに元の生活へ全部戻すのではなく、歩行、体幹、股関節まわりの機能を整えながら戻していくことが大切です。
運動療法は、腰や脚の痛み、生活のしにくさ、生活の質の改善に役立つ可能性がありますが、全員に同じ量が合うわけではありません。
(Clinical efficacy of exercise therapy for lumbar disc herniation)

改善しにくいときに見直したいポイント

次のような場合は、運動量を増やす前に、やり方や評価を見直したほうがよいことがあります。

  • 体操のたびに足のしびれが強くなる
  • 歩くとすぐ痛みが増える
  • 座る時間が長い生活が続いている
  • 前かがみや持ち上げ動作が日常で多い
  • ほかの病気や加齢変化が重なっている可能性がある

高齢者では、椎間板ヘルニアだけでなく、脊柱管狭窄症などの要素が重なっていることもあります。
(高齢者腰椎椎間板ヘルニアの特徴と診断、高齢者腰椎椎間板ヘルニアの臨床所見と病態)

自宅でできる椎間板ヘルニアのリハビリ体操

自宅で行う体操は、「効きそうだから強くやる」より、「症状が強くならない範囲で丁寧に続ける」ことが大切です。
特に初期は、回数よりフォームを優先してください。

AAOSでは歩行プログラムや背部・下肢の柔軟性、筋力を整える運動が紹介されており、近年のレビューでも運動療法は保存療法の補助として役立つ可能性が示されています。
(AAOS “Herniated Disk in the Lower Back”、Clinical efficacy of exercise therapy for lumbar disc herniation)

呼吸を使ったやさしい体幹トレーニング

仰向け、または椅子に座って、鼻から息を吸い、お腹と脇腹がふくらむのを感じます。
次に、口からゆっくり吐き、お腹を軽くへこませるようにします。

腰を固めすぎずに体幹を使う感覚をつかみやすく、痛みが強い時期でも比較的始めやすい方法です。

骨盤まわりをやさしく動かす体操

仰向けで膝を立て、腰を軽く床に近づけるように骨盤を後ろへ傾け、戻します。
大きく動かす必要はありません。小さく、ゆっくり行うだけでも十分です。

お尻・股関節まわりを使う体操

痛みが落ち着いてきたら、ブリッジのようにお尻を軽く持ち上げる運動や、横向きで股関節を少し開く運動が候補になります。
腰だけを何とかしようとするより、お尻や股関節も一緒に使えるようにするほうが、日常動作で腰に負担が集中しにくくなります。

痛みが落ち着いてからの歩行練習

歩ける方は、短い時間の歩行から始め、症状が悪化しなければ少しずつ延ばします。
いきなり長く歩くより、「数分を何回か」に分けるほうが続けやすいこともあります。(AAOS “Herniated Disk in the Lower Back”)

椅子に座ってできる体操

床での運動が不安な方や高齢者は、椅子に座ってできる方法から始めると安全です。

  • 骨盤を小さく前後に動かす
  • 背筋を伸ばして呼吸を整える
  • 片足ずつ軽く持ち上げる
  • つま先とかかとの上げ下ろしをする

60代・70代・80代では、「きつい運動」より「安全に続けられる運動」のほうが実際には役立つことが多いです。

体操一覧

体操名主な目的対象部位実施時のポイント
呼吸を使った体幹練習体幹の安定感を高めるお腹・脇腹・体幹呼吸を止めず、痛みが増えない範囲で行う
骨盤の前後運動腰まわりの緊張を整える骨盤・腰部周囲大きく動かしすぎない
軽いブリッジお尻・体幹の協調性を高める殿筋・体幹腰を反りすぎず、お尻で持ち上げる
椅子座位での足上げ安全に下肢を動かす股関節・太ももしびれが強くなるなら中止する
短時間歩行日常生活へ戻る準備全身・持久力長く歩くより短時間から始める

体操は、たくさんやることより、今の症状に合っていることが大切です。
「今日は腰より足のしびれが気になるから少なめにする」といった調整ができるほうが、実際には続きやすくなります。
(Clinical efficacy of exercise therapy for lumbar disc herniation)

椎間板ヘルニアでやってはいけない運動・控えたい動き

「絶対にやってはいけない運動」が全員で同じとは限りません。
ただし、症状が強い時期には、悪化しやすい動きがあります。

控えたい動きの例

  • 前かがみを長く続ける
  • 重い物を急に持ち上げる
  • 強くひねるスポーツや動作
  • 反動を使った筋トレ
  • 痛みやしびれを我慢して続けるストレッチ

前かがみを繰り返す動き

床掃除、草むしり、洗面台で長くかがむ、低い場所の収納整理などは、症状を悪化させやすいことがあります。
やる必要があるときは、時間を短く区切り、膝や股関節を使う工夫を入れてください。

重い物を急に持ち上げる動き

床から重い荷物を急に持ち上げると、椎間板へ負担が集中しやすくなります。
持つ必要がある場合は、物を体に近づけ、膝と股関節を使って持ち上げるほうが安全です。
(日本整形外科学会「腰椎椎間板ヘルニア」)

強くひねる運動や勢いのある運動

ゴルフやテニスのスイングのような強いひねり、反動を使う腹筋、勢いよく上体を倒すストレッチは、時期によっては負担が大きくなります。
症状が落ち着くまでは、コントロールできる範囲の運動を優先したほうが安心です。

痛みやしびれを我慢して続ける筋トレやストレッチ

「効いている感じ」と「悪化している状態」は別です。
運動後に足のしびれが強くなる、歩きにくくなる、夜まで痛みが残る場合は、今の状態に合っていない可能性があります。

やってよい/控える運動

項目やってよい控える理由
日常の動き短時間の歩行、姿勢を変えながらの生活同じ姿勢を長く続ける負担の集中を防ぎやすい
体操呼吸練習、骨盤運動、軽い体幹・殿筋運動反動の大きい腹筋運動痛みやしびれが強くなることがある
ストレッチ心地よい範囲の軽い伸び強い前屈ストレッチ神経症状を悪化させることがある
筋トレ痛みが増えない範囲の軽負荷高重量のトレーニング腰への負担が大きい
スポーツ復帰段階的に再開いきなり元の強度に戻す再発やぶり返しの原因になりやすい

この表もあくまで目安です。
「やってよい」に入っていても、症状が強くなるなら中止して見直してください。

60代・70代・80代の椎間板ヘルニアのリハビリで気をつけたいこと

腰椎椎間板ヘルニアは若い世代のイメージがあるかもしれませんが、高齢者にも起こります。
ただし、高齢になるほど、若い人と同じような症状の出方をしないことがあり、脊柱管狭窄症などの加齢変化が重なって見えることもあります。
(高齢者腰椎椎間板ヘルニアの特徴と診断、高齢者腰椎椎間板ヘルニアの臨床所見と病態)

年代別に見るポイント

年代起こりやすい悩みリハビリで重視したいこと注意点
60代仕事・家事の負担、長時間座位姿勢と動作の見直し、無理のしすぎ防止少し良くなって無理をしやすい
70代活動量低下、歩行量低下歩く力や立ち上がりの維持痛みだけでなく筋力低下にも注意
80代転倒不安、床運動のしにくさ椅子体操、短時間歩行、安全性ヘルニア以外の変化も重なりやすい

60代は仕事・家事・長時間座位の負担を見直す

60代では、まだ仕事や家事の負担が大きい方も多く、「少し良くなると無理をしてぶり返す」ことが起こりやすい年代です。
デスクワーク、運転、介護、買い物での持ち運びなど、日常の負担を整理しながらリハビリを進めることが大切です。

70代は歩行量の低下と筋力低下に注意する

70代では、痛みそのものだけでなく、活動量が落ちることで歩行や立ち上がりの力が下がりやすくなります。
症状が少し軽くなっても、歩く量が減ったままだと回復しにくいことがあるため、「痛みを減らす」だけでなく「生活動作を戻す」視点が大切です。

80代は無理に鍛えるより安全に続けることを優先する

80代では、床での筋トレより、椅子を使った体操、短時間歩行、立ち座りの練習など、安全に続けやすい方法のほうが役立つことが多いです。
高齢では椎間板ヘルニアの頻度は下がる一方で、画像上の膨らみが別の病態と混同されることもあります。
(Trend of the incidence of lumbar disc herniation、高齢者腰椎椎間板ヘルニアの特徴と診断)

高齢者では脊柱管狭窄症との見分けも大切

高齢者では、若い人に多い前屈制限より後屈制限が目立ったり、SLRがはっきり陽性でないのに歩きにくさが強かったりすることがあります。
歩くと足がつらくなり、少し休むとまた歩けるような場合は、脊柱管狭窄症の要素が重なっていることもあります。
(高齢者腰椎椎間板ヘルニアの臨床所見と病態)

保存療法と手術の違い|椎間板ヘルニアの手術はどんなときに検討する?

椎間板ヘルニアでは、まず保存療法が選ばれることが多いです。
日本整形外科学会の資料でも、薬物療法、ブロック療法、理学療法などが紹介されています。
(日本整形外科学会「腰椎椎間板ヘルニア」)

保存療法が基本になることが多い理由

すべてのヘルニアがすぐ手術になるわけではありません。
症状や生活への影響を見ながら、薬、運動、生活指導を組み合わせて経過を見ることが多くあります。

手術を検討しやすい症状

次のような場合は、手術の検討につながることがあります。

  • 保存療法で強い下肢痛がなかなか改善しない
  • 筋力低下が進んでいる
  • 歩行や日常生活への影響が大きい
  • 排尿・排便の異常がある

短期的には手術のほうが改善が早い場合がありますが、長い目で見ると差が小さくなるという報告もあり、年齢や生活背景を含めて判断することが大切です。
(腰椎椎間板ヘルニア診療ガイドライン2021、AAOS “Herniated Disk in the Lower Back”)

足の麻痺や排尿・排便の異常は早めの相談が必要

足に急に力が入らなくなった、つま先立ちや踵歩きが難しい、尿が出にくい、漏れるなどの症状は、自己流の体操より受診が優先です。
こうした症状は、早めに手術を含めた判断が必要になることがあります。
(日本整形外科学会「腰椎椎間板ヘルニア」)

手術後のリハビリでよくある流れ

術後のリハビリは、おおまかに次のように進むことが多いです。

  • 術後早期:歩行や基本動作の再開を進める
  • 退院後:無理のない範囲で体を動かし、生活へ戻していく
  • 再発予防期:背中や股関節まわりの機能を整える

2025年のシステマティックレビューでは、腰椎椎間板ヘルニア手術後の理学療法は、痛み、機能、生活の質の改善に役立つとされています。特に、背中の筋持久力、柔軟性、筋力を高める運動は有効とされる一方、神経モビライゼーションを含む運動は一律には勧められていません。
(Physical therapies after surgery for lumbar disc herniation)

病院で方針は聞いたものの、「自宅で何をどこまでやればよいか」で迷う方は少なくありません。
特に、痛みやしびれに合わせて運動量を調整するのが難しい場合は、生活の中での動き方まで含めて整理すると続けやすくなります。

RioToReでは、理学療法士がご自宅での動き方や運動の進め方を個別に確認する在宅サポートを案内しています。
シニア特化の自費訪問リハビリ・歩行改善| 東京の出張パーソナルトレーニングRioToRe(リオトレ)

コルセットや補助具の扱い

コルセットは、痛みが強い時期の補助として短い期間使われることがあります。
ただし、「つけていれば安心だから長く使い続ける」ものではありません。

日本整形外科学会の資料では、痛みが強い時期にコルセット装着が行われることがあるとされています。一方、NICEでは、腰痛や坐骨神経痛に対して routine のベルトやコルセットは勧めていません。
(日本整形外科学会「腰椎椎間板ヘルニア」、NICE guideline NG59)

コルセットでよく迷いやすい点

  • 寝るときまでつけるか
  • いつ外し始めるか
  • 動くときだけ使うのか
  • 長く使うと弱るのではないか

一般的には、強い痛みをやわらげるために短期間使い、症状が落ち着いてきたら少しずつ外す方向で考えることが多いです。
ただし、装着時間や外し方は症状によって変わるため、自己判断で長く使い続けるより、医師や療法士に相談したほうが安心です。

杖や手すりは使ったほうがよい?

杖や手すりは、「使うと弱るから避ける」より、「必要な場面で安全のために使う」と考えるほうが現実的です。
特に70代・80代で足のしびれや筋力低下がある方は、見栄より転倒予防を優先したほうが安心です。

椎間板ヘルニアのリハビリ期間の目安

椎間板ヘルニアのリハビリ期間は一律ではありません。
数日で判断できるものではなく、数週間から数か月の単位で少しずつ生活へ戻していくイメージのほうが近いです。

AAOSの spine conditioning program では、一般的な運動プログラムを4〜6週間ほど継続する考え方が示されています。ただし、これは全員に同じように当てはまる数字ではなく、症状の変化を見ながら考える必要があります。
(AAOS “Spine Conditioning Program”)

期間の見方を簡単に整理すると

  • 数日で良し悪しを決めつけない
  • まずは悪化しにくい過ごし方を覚える
  • その後、歩行や体操を少しずつ増やす
  • 痛みの強さだけでなく、生活で動きやすくなったかを見る
  • 悪化サインがあるなら期間より受診を優先する

痛みが強い時期の過ごし方

この時期は、症状を悪化させる姿勢や動作を減らし、必要な生活動作は安全に続けます。
「何もしない」より「悪化しない範囲で動く」を意識すると進めやすいです。

動ける量を少しずつ戻す時期

歩行や体操を少しずつ増やしながら、悪化しないラインを探ります。
昨日できた量が今日はつらいこともあるため、固定の回数より、その日の状態に合わせるほうが現実的です。

再発予防として続けたい時期

痛みが減ってからは、座り方、立ち上がり方、荷物の持ち方、歩く習慣、股関節と体幹の運動を無理なく続けることが大切です。
この時期まで見据えると、ぶり返しを防ぎやすくなります。

長引くときに見直したいこと

次のようなときは、期間の問題として考えるより、評価の見直しを優先してください。

  • 2〜3週間たっても悪化が続く
  • 体操のたびに足症状が強くなる
  • 歩行が不安定になってきた
  • しびれや脱力が強くなってきた

高齢者の椎間板ヘルニアで家族ができること

高齢者の椎間板ヘルニアでは、ご本人だけでなく、家族の関わり方も大切です。
「痛いなら全部やめて」と言いすぎると活動量が落ちやすく、逆に「もっと歩いたほうがいい」と急がせすぎると悪化することがあります。

家族が意識したいポイント

  • 動きすぎを防ぐ
  • 動かなすぎも防ぐ
  • 転倒しにくい環境を整える
  • 病院で聞いたことを家で実行しやすくする
  • 一人で続けにくいときの支えになる

動きすぎ・動かなすぎの両方を防ぐ

「今日はどの動きでつらかったか」「どれくらいなら歩けたか」を一緒に確認しながら進めると、無理をしすぎずに続けやすくなります。
家族は監督役になるより、一緒に調整する立場のほうがうまくいきやすいです。

転倒しにくい環境を整える

床に物を置かない、よく使う物を高すぎる場所や低すぎる場所に置かない、夜の移動を明るくする、必要なら椅子や手すりを使うなど、環境調整はそれ自体がリハビリの助けになります。

通院だけでは続きにくいときの支え方

病院で説明を受けても、自宅でどう動けばよいかまで落とし込めないことは少なくありません。
特に60代・70代・80代では、「病院ではできても家では難しい」ことがよくあります。

訪問リハビリを検討したいケース

次のような場合は、自宅での支援が合いやすいことがあります。

  • 一人では体操を続けにくい
  • 家の中での動き方に不安がある
  • 家族もどう支えればよいかわからない
  • 通院だけでは生活場面まで見てもらいにくい
  • 外出そのものが負担になっている

ご本人だけでなく、ご家族も不安がある場合は、自宅環境での動き方まで含めて相談できると進めやすくなります。
RioToReでも、理学療法士による在宅リハビリ・パーソナルトレーニングの中で、自宅での動き方や継続支援を重視しています。お問い合わせLINE無料相談につなげる流れにすると自然です。

椎間板ヘルニアのリハビリでよくある質問

1.椎間板ヘルニアのリハビリは痛くても続けたほうがいいですか?

結論として、痛みを我慢して続ける必要はありません。
理由は、椎間板ヘルニアのリハビリは我慢比べではなく、症状を悪化させない範囲で生活へ戻るためのものだからです。
(Clinical efficacy of exercise therapy for lumbar disc herniation)

注意点として、腰のだるさ程度ではなく、足のしびれや放散痛が強くなる、歩きにくくなる、夜まで痛みが残る場合は、やり方を見直したほうが安心です。

2.椎間板ヘルニアのしびれはリハビリで改善が期待できますか?

結論として、改善が期待できる場合はあります。
理由は、運動や生活動作の調整で神経への刺激を減らし、機能を整えることで、痛みや生活のしにくさが軽くなることがあるためです。
(AAOS “Herniated Disk in the Lower Back”、Clinical efficacy of exercise therapy for lumbar disc herniation)

注意点として、しびれが強まる、感覚がかなり鈍い、足に力が入らないときは、体操だけで様子を見ないほうが安全です。

3.椎間板ヘルニアで歩くのはよいですか?

結論として、歩ける方は無理のない範囲で歩くことが役立つことがあります。
理由は、歩行は活動量を保ちやすく、回復初期にも取り入れやすいからです。
(AAOS “Herniated Disk in the Lower Back”)

注意点として、長く歩くことを目標にしすぎず、数分から始めて症状の変化を見ながら調整してください。

4.椎間板ヘルニアでやってはいけない筋トレはありますか?

結論として、症状が強い時期の高負荷トレーニングや反動の大きい筋トレは控えたいです。
理由は、前かがみや強いひねり、重い負荷が腰や神経への刺激を増やすことがあるためです。
(日本整形外科学会「腰椎椎間板ヘルニア」)

注意点として、同じ種目でも時期によっては可能になることがあります。種目名だけでなく、症状がどう変わるかで判断することが大切です。

5.60代の椎間板ヘルニアでも自宅リハビリはできますか?

結論として、60代でも十分可能です。
理由は、60代では仕事や家事の負担が症状に影響していることも多く、自宅での姿勢や動作の見直しが役立ちやすいためです。
注意点として、少し良くなった段階で無理をしてぶり返しやすいので、急に元の生活へ戻しすぎないことが大切です。

6.70代で足に力が入りにくいときは手術を考えるべきですか?

結論として、手術が必要かどうかは症状の強さと進み方で判断します。
理由は、70代でも保存療法で見ることはありますが、筋力低下が進んでいる場合や歩行障害が強い場合は、早めの整形外科評価が必要だからです。
(日本整形外科学会「腰椎椎間板ヘルニア」)

注意点として、「高齢だから全部保存療法」と決めつけず、ご本人の体力や生活状況も合わせて考えることが大切です。

7.80代でも椎間板ヘルニアのリハビリは受けられますか?

結論として、状態に合わせたリハビリは可能です。
理由は、80代では床での運動より椅子や歩行を中心に、安全に続けやすい形へ調整することで取り組めることが多いためです。
注意点として、80代ではヘルニア以外の加齢変化も重なりやすいため、「ヘルニアの体操」だけにこだわりすぎないことが大切です。
(Trend of the incidence of lumbar disc herniation、高齢者腰椎椎間板ヘルニアの臨床所見と病態)

8.椎間板ヘルニアと脊柱管狭窄症はどう違いますか?

結論として、どちらも足の痛みやしびれが出ますが、背景が少し違います。
理由は、椎間板ヘルニアは飛び出した椎間板が神経を刺激する要素が強く、脊柱管狭窄症は加齢変化による通り道の狭さが関係しやすいためです。
(高齢者腰椎椎間板ヘルニアの特徴と診断)

注意点として、高齢者では両方の要素が重なることもあるため、自己判断だけで決めつけないほうが安心です。

9.コルセットはずっと着けていてもいいですか?

結論として、ずっと着け続ける前提では考えないほうがよいです。
理由は、強い痛みの時期の補助としては使われることがありますが、長い目で見ると動き方や筋機能の調整が大切だからです。
(日本整形外科学会「腰椎椎間板ヘルニア」、NICE guideline NG59)

注意点として、寝るときや外すタイミングは症状で変わるため、医師や療法士に相談してください。

10.椎間板ヘルニアの手術後はいつから歩けますか?

結論として、比較的早い時期から歩行を進めることが多いです。
理由は、術後のリハビリでは、日常動作の再開や機能回復のために歩行が大切だからです。
(Physical therapies after surgery for lumbar disc herniation)

注意点として、具体的な開始時期や運動内容は術式や主治医の方針で変わります。

11.MRIでヘルニアと言われたら必ずそれが原因ですか?

結論として、必ずしもそうとは限りません。
理由は、画像で椎間板の膨らみが見えても、症状がないこともあり、今の症状をそれだけで説明できない場合もあるからです。
(日本整形外科学会「腰椎椎間板ヘルニア」、NICE guideline NG59)

注意点として、MRIに加えて、しびれの範囲、筋力、感覚、歩き方なども合わせて見ることが大切です。

12.訪問リハビリや自費リハビリが向いているのはどんな人ですか?

結論として、自宅での動き方に困っている人、一人では続けにくい人、家族も不安がある人に向いています。
理由は、ベッドからの起き上がり、椅子の高さ、洗面、台所、階段など、実際に困る場面は自宅で見たほうが調整しやすいからです。

注意点として、まず医療機関での評価が優先となる症状がある場合は、先に受診を考えてください。

まとめ

椎間板ヘルニアのリハビリで大切なのは、痛みが強い時期に無理をしないこと、少し落ち着いたら安全に動くこと、そして再発しにくい体の使い方を身につけることです。
画像だけで決めつけず、症状の出方、筋力、歩きやすさ、日常生活で困っていることを合わせて考えることが大切です。
(日本整形外科学会「腰椎椎間板ヘルニア」、NICE guideline NG59)

また、60代・70代・80代では、仕事や家事の負担、活動量の低下、転倒リスク、脊柱管狭窄症などの加齢変化もふまえて進める必要があります。
年齢だけで悲観する必要はありませんが、若い人向けの情報をそのまま当てはめすぎないことが大切です。
(高齢者腰椎椎間板ヘルニアの特徴と診断、高齢者腰椎椎間板ヘルニアの臨床所見と病態)

「自宅での体操が合っているか不安」「病院では聞ききれない」「家族もどう支えればよいかわからない」という場合は、通院だけで抱え込まず、生活場面まで含めて専門家に相談する方法もあります。
医療機関での治療と、在宅での支援をうまく組み合わせながら、無理なく続けていくことが大切です。

【監修者プロフィール】

八幡 亮(やわた りょう)
国家資格:理学療法士(PT)

RioToRe代表。
回復期リハビリ病院にて4年間、脳血管疾患や整形外科術後の患者を含む2,000人以上の症例を担当。その後オーストラリア・シドニーでパーソナルトレーナー/指圧マッサージセラピストとして活動。

現在は東京を拠点に、理学療法士トレーナーによる高齢者専門の出張型パーソナルトレーニング・自費リハビリ「RioToRe」を運営。企業の健康経営サポートや講演活動も行い、最新のリハビリ知見を活かしたサービスを提供している。

<メディア出演>
テレビ東京「なないろ日和」出演
雑誌・Webメディアにて健康記事を多数監修

理学療法士トレーナー/八幡亮

トレーナー紹介ページはこちら

参考文献

ページトップへ矢印